九州でも3月初旬になごり雪になることが多く、なかなか一足飛びには春になりませんが、もう一息です。
お花見の頃になると、地面では様々な植物が背丈を伸ばしていたことに気がつきます。土筆(つくし)や竹の子が春の味わいとして食卓を賑わすことも多いでしょう。
この時期、グングン伸びた蓬(よもぎ)のやわらかい葉先だけを摘みとって「よもぎ餅」をつくるのも楽しいですね。
わざわざ餅つきをしなくても少量なら、蒸したもち米をボウルに移し、杵(きね)の代わりになるすりこぎやのし棒などでトントンとついて蓬を加えて、8割がたもち米の粒々がなくなったところで、餡を包めばできあがり…また、2・3日干してからカットし、かき餅にすることもできます。
トースターで焼いたり、カリッと揚げたりお好みで召し上がれ…
また、最近では、家庭用の製パン械で(4合程度)の餅をつくることもできるようです。
よく考えると、パンも餅もこねてつくる工程が似ていますね。もち米を研いで水と合わせてスタートすれば、1時間程度で餅になります。便利な時代になりました。
この場合、蓬はできあがりの直前で加えます。
さて、その蓬の下ごしらえですが、①摘んできた蓬を良く洗い ②多めの湯を沸かして塩と重曹を少量加えてやや長めに茹でます ③ボウルにとり、流水で何度か水を換えてすすぎ ④ザルに上げて水気をよく絞ってから細かく刻みます(冷凍もできます)。
漢方では、蓬を「艾葉(がいよう)」と呼びます。
艾は「止める」で、様々な病気を止める薬草の意味を持っているのだそうです。効能は「止血」「女性の血の道症」などに活用されます。子どもの頃、野原で駆け回って遊んでいて、小さな切り傷をつくった時に、上級生から「蓬をつんでちぎって汁を出してつけるといい」と教わったものですが、食品としても、食物繊維の多さで群を抜き(ほうれん草の10倍)、クロロフィルはいわゆるデトックス作用が強いことで知られています。あの苦さ渋さが鍵というわけでしょう。
春の芽食材の効用
蓬をはじめ、新芽を食す春の若葉には「苦味」を含むものが多いのですが、東洋医学では、この苦味が春の味の代表でもあります。気候が暖かくなってきて、新陳代謝が活発になる春は、血液の浄化をつかさどる肝機能のはたらきを助けてあげることが大切です。
そして、もう1つ、酸味を加えるのがポイントとなります。
わかめの酢の物、菜の花のちらし寿司、たらの芽の天ぷらにレモン…どれも理にかなっていますね。
しじみ、あさり、蛤(はまぐり)などの貝類は、また、肝に良い食品でもあります。
旬の食材=薬、その代表の1つが蓬であるわけですね。